歌川広重 花鳥画
NDLイメージバンクより引用
https://rnavi.ndl.go.jp/imagebank/index.html
面白い展示会 展示空間のない図書館の電子展示会や輸送中の包装紙までが展示法へ
デジタルとアナログの境界を崩すところに新たな価値=展示用空間をもたない図書館が、展示会を可能にする!
短冊という図書に描かれた花鳥画
境界を崩すという現代アートの手法は、今まで考えられなかった巨匠の古文書に書かれた絵を、展示化させました。
具体的には、美術館には展示されない国立国会図書館の美術資料が、電子コンテンツとなって展示されています。
美術館では決して観ることはできない日本の絵画の巨匠たちのアート作品が、電子コンテンツとなって現代にアーカイブ化されているのです。
電子テクノロジーの発達は、画像のきめ細かさを、実物と同じレベルで電子的に再現することを可能にしました。
歌川広重の花鳥画
歌川広重の版画はヒロシゲブルーと呼ばれ、欧米や諸外国でも大人気です。
印象派の画家やゴッホにも強い影響を与えています。北斎と並ぶ日本が生んだ国際的なスーパースターなのです。
その歌川広重の秘蔵の短冊画である花鳥画などは、諸外国のアーティストにも興味深々です。
しかも、著作権の失効した絵画のみを、電子化して、展示しているので、出典の記載を前提に、画像を転載することも自由です。(都度、国会図書館の許可を得る必要はないです。)
一般の鑑賞家の方は、もちろん、画風を研究するサイトなどは、利用価値が高いです。
包み紙という本来の用法の境界を崩すことで、思いもよらない展示法へ
面白い展示方法 版画編 北斎漫画!陶器の包み紙という展示法!!
実は、北斎の浮世絵は、江戸末期時代の当時の日本では、評価が低く、暦などの差し絵のような感覚で、安く売られていました。
それぐらい北斎の絵は、当時の日本では、評価されていなかったのです。
北斎の色使いや遠近法が、世界の画家の目に留まるきっかけは陶器の輸出
北斎の芸術性に、目をつけたのは、実は、その後の西洋の文化だったのです。
日本が国として、初めて出品した1867年(慶応3年)の第2回パリ万博を通じて、日本の工芸品や浮世絵などが、当時のフランスの美術界では、すでに注目を集めていました。
この現象は、ジャポニズムと呼ばれ、画家の色彩感覚にも、かなりの影響を与えていました。
しかし、北斎の浮世絵を西洋に伝えたのは、パリ万博ではなく、突拍子もないものを通じてでした。
ジャポニズムによって日本の陶器がもてはやされ、日本から西洋に輸送されたときの、陶器の、包み紙に、※北斎漫画という北斎が弟子に向けてまとめた絵手本の断片が使用されていたのです。
なんと、この包み紙の断片が、当時の西洋の芸術家の目にとまり、未踏の衝撃を与えることで、世界の北斎のきっかけをつくることになるのです。
ときには、陶器の包み紙(当時の、船荷輸送中の陶器への衝撃を吸収する衡衝材)でさえも、思いもよらない展示法として、機能するのです。
※北斎漫画というのは、画学生のための教材です。全15編、画数4000点からなる大作です。人物、動植物、風俗、道具、妖怪に至るまでが取り上げられています。
現代では、パッケージの包装紙やレジ袋などに、絵画をプリントしたものが、北斎の展示法の応用として、脚光を浴びる可能性があります。
コラム 北斎の遠近法は、近景と遠景の境界を崩し和漢洋の技法を巧みに用いる!元祖境界崩しの達人
葛飾北斎 東京国立博物館所蔵 神奈川沖浪裏 Google Art Projectの画像より引用
セザンヌにも影響を与えた北斎の遠近法!
この絵は、有名な北斎の神奈川沖浪ですが、富士山と人の乗っている船の大きさを比べてみてください!
遠くと近くの大きさの比率を等質的な空間としては、描かれていません。
最も大きな比率のものは、浪なのです。この浪が、人の乗っている船と富士山を飲み込むようなダイナミクスが感じられます!
あたかも、浪を下から、見ている感覚に、誘われます!
他方で、浪と異なり、富士山は、下から仰ぐ風景ではなく、上空1000メートルくらいの場所から横目に見た風景に見えます。
実は、アイライン(見る人の目の位置)が、北斎の場合、2本あるのです。北斎は「三つどりの法」という構図で、画面を横に3分割するのです。
それぞれの線が、地平線に垂直に引かれていて、この線の上に1点消失法の遠近法の消失点がそれぞれあるのです。
その結果、下から見上げる視線の風景と横から見る視線の風景とが、1枚の絵の中に違和感なく描かれています。
それぞれの消失点の一方を明確にし、他方を不明確にすることで、2つの視線の風景を重ねた絵というのが、見る人に気づかれないようにしています。
神奈川沖浪裏では、下のアイラインと富士山の頂上の重なるところに、明確な消失点があります。他方で、上のアイラインの消失点は、雲と重なっていて、下の富士山の頂上の消失点ほどには、明確ではないですね!
その結果、一枚の絵の中に、自然な形で、2つの視線が違和感なく描かれています。
あたかも、森羅万象のうねりが、あらゆるものを包み込む感が、描かれているような気がしますね。
セザンヌのビクトール山の絵にも北斎の2つの視線を用いる遠近法が使用されている?
フランスのポール・セザンヌは、ルネッサンス期の写実主義に忠実な遠近法を崩すことで、印象派のピカソやキュビズムに影響を与えたとされています。
北斎の神奈川沖浪裏と、セザンヌの遠近法を崩した典型画のビクトール山の絵を並べると、「三つどりの法」が構図に用いられているのがわかります。上記の並べた絵の2本の黄色い線をご覧ください!
北斎の神奈川沖浪裏では、富士山の真上の雲の下方部に、ぼやかすように、上部の消失点がありますが、セザンヌのビクトール山の絵では、北斎と同様に、ビクトール山の頂上のあたりの、上部のアイラインの消失点があります。
二人とも、上部の消失点を不明確にすることで、自然な形で、下部との2つの視線が違和感なく描かれています。
この絵のビクトール山の頂上は、なにか霞がかかったような、消失点を見えにくくする描き方になっています。
いずれにしても、従来の遠近法とは、異なるセザンヌ独自の遠近法と評価された、ビクトール山の絵は、北斎の「三つどりの法」が、隠されているように思われます。
北斎は、アメリカのライフ誌の「この1000年で、最も、重要な功績を残した世界の人物100人」の中に、日本人として唯一ひとり名を連ねています。
それくらい北斎の功績は、世界的に有名ということです。